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ユースアクション新聞2023.02.26

くら寿司独自のシステムとプロジェクトで 水産資源と漁業の未来を守る

日本だけではなく、今や世界中で親しまれている回転 寿司。その中でも大手回転寿司チェーンとして名を連ね ているくら寿司はこれからも私たちが回転寿司を楽しむ ために、そして水産資源と漁業の未来を守るために独自 のシステム開発とプロジェクトに取り組んでいます。
本当に必要な量だけレーンに流す製造管理システムくら寿司の特徴ともいえる空気中のホコリや様々なウイルスから寿司を守る抗菌寿司カバー「鮮度くん」。この 「鮮度くん」のフタにはQRコードが 取 り 付 け て あ り 、商 品 をレーンに乗せたときからの時間を管理しています。既 定の時間を超えると厨房内で自動的にフタが開き、音と 画面で廃棄のタイミングを知らせる仕組みで、レーンに 流れている寿司の鮮度を一定に保つことができます。し かし、これによって廃棄の量が一度上がってしまいまし た。ここで開発されたのが製造管理システムです。厨房 に設置されたパネルの画面にはお客様の滞在時間を階で分け、時間の経過ごとに注文する寿司の量を予想し、係数化した「 顧客係数 」が表示されています。そして厨房のスタッフは「顧客係数」をもとに今必要な寿司の種類と量を予測し、 製造します。この製造管理システムによって廃棄率が12 %から 3 % へと減少しました。

国産天然魚を完全活用し 廃棄を出さない「さかな100%プロジェクト」
くら寿司は2018年5月より大手回転寿司チェーン初の取り組みとなる国産天然魚の食べられない部位を活 用 し 、廃 棄 を 出 さ な い「 さか な 1 0 0% プ ロ ジ ェ ク ト 」をスタートしました。 くら寿司は大阪府貝塚市にある国産天然魚用自社加工セン タ ーに年間約 2 , 0 0 0トンの天然魚を集めて寿司ネタへと加工す るだけではなく、寿司ネタにできない部位、いわゆる中落ちをすり身にしてねり天やコロッケを作っていました 。しかしそれでも国産天然魚用自社加工センターでは年 間 約 6 0 0 トン の 骨 や アラなどの商品にできない部位の活用が課題としてありまし た。この課題を解決するために始まったのが骨やアラを魚粉 にし、その魚粉をくら寿司で販売する養殖魚の餌の一部として活用する取り組みです。これにより生まれた画期的な魚が循環フィッシ ュであり、さらに付加価値を高めるため、柑橘の皮やオイルを混ぜたものを餌として食べたフルーティフィッシュなどがあります。

これからも日本の魚が食べられるようになるために

日本の漁業従事者は年々減少と高齢化の一途をたどってお
り、その背景には収入の不安定さがあります。市場における魚 価変動の影響を受けやすいためです。そこでくら寿司が始めた のが定期網で獲れた魚を重量に応じて年間契約で決めた価格で 全て買い取る「一船買い」です。「一船買い」によって漁師は市 場価格に左右されずに、そして市場価値の低い低利用魚も引き 取ってもらえるというメリットがあります。しかしこの「一船 買い」には、もう一つ重大な課題がありました。それは定期網 で獲れた魚には寿司ネタにできない未成魚も混ざっているとい うことです。未成魚が獲れる数は季節によって様々ですが、あ る時期だとハマチの未成魚は10トン、マダイの未成魚は 1トン にもなるそうです。そして未成魚は一度網にかかってしまうと 弱ってしまい、海に帰しても長く生きることができません。そ こで未成魚を有効活用するためにくら寿司と漁師が協力して始 めたのが「天然魚魚育プロジェクト」です。この取り組みでは 定期網で獲れた未成魚を寿司ネタにできるサイズまで育て、最 終的に商品価値の高い成魚として出荷することを目的としてい ます。最初は未成魚がなかなか餌を食べてくれず、とても困難 な道のりでした。しかし養殖魚が先生役となって餌を食べる姿 を見せることで徐々に未成魚も餌を食べるようになり、今では ハマチの未成魚の場合、一年をかけて700グラムから2キログ ラムまで成長させることができるようになりました。