世界の貧困解消を目指した企業市民活動
数々の名言を残したことで有名なパナソニック創業者松下 幸之助であるが、事業活動については次のような言葉を残して いました。「基本の社会的責任というのは、どういう時代にあっ ても、この本来の事業を通じて生活の向上に貢献する事だとい えよう。こうした使命感というものを根底に、一切の事業活動 が営まれることがきわめて大切なのである。」この言葉からも、 事業を通じて人々の生活に、社会に貢献することを重視してい たことが分かります。そして、社会貢献の中でも特に、松下幸 之助自身が「生産者の使命は、この世界から貧困をなくしてい くことではないか」*7 と考えていたことから、2018年の創業100 周年を迎えるにあたり、SDGs17 の目標「貧困をなくそう」をパ ナソニックグループの取り組むべき社会課題の重点テーマと して見直しました。同時に、これまで行ってきた無電化地域へ “あかり" を届ける「ソーラーランタン10 万台プロジェクト(無電
化地域にソーラーランタンを届ける活動)」 のノウハウを活か し、「無電化地域ソリューションプロジェクト(無電化地域に電 力供給システムを届ける活動)」を開始した。無電化地域に「あ かり」を届けることで、家庭状況により夜間しか勉強ができな い子どもや、夜間の安全な医療活動など、電気の明かりが使えな い こ と で 様 々 な 課 題 に 直 面 し て い る 約 8 億 人( 2 0 1 9 年 度 時 点 ) の機会創出に繋がっています。このような機会創出の他、人材 育成、相互理解の計3つを企業市民活動の軸として世界の貧困解消に取り組んできました。
貧困解消に向けた相互理解 映像制作支援プログラム「K W N」
パナソニックが貧困解消の糸口として掲げている相互理解
を 深 め る た め の プ ロ ジ ェ ク ト の 1 つ に「 キ ッ ド ・ ウ ィ ッ ト ネ ス ・ ニュース(以下 K W N)」があります。K W N は、小学生・中学生・ 高校生を対象にした映像制作支援プログラムです。映像制作 活動を通じて、創造性やコミュニケーション能力を高め、チー ムワークを養うことを目的としています。映像制作のテーマ は様々ですが、近年は「 SDGs に関する伝えたい事」がテーマと なっています。K W N は 1989 年にパナソニックがアメリカで最 初に行い、2003年から日本でも開始し、これまでに累計18 万人 以上の子ども達や先生が参加しました * 10 。毎年1 度コンテスト が実施される他、グローバルサミットには国境を越えて世界中 の優勝校の子どもが集まります。近年は新型コロナウイルス の影響で表彰式及びグローバルサミットはオンラインでの開 催となっていますが、SDGs を意識して映像制作を行った世界 中の子ども達が自分たちの想いを議論する場となっています。 中には、英語が母国語ではないものの、自分の想いを伝えるた めに英語で意思を伝えることにチャレンジする子どもの姿も 見受けられます。作品を制作するためにチームワークを醸成
することはもちろん大切であり、そのような力を育む教 育プログラムは既に各所でなされているように思いま す。しかし、自分たちが制作した映像の背景にある想いを、 背景の異なる相手に伝え、一緒に考えることができるプ ログラムは貴重です。背景の異なる相手と共に1つの課 題解決について考えることこそが相互理解であり、貧困 解消、その先にあるSDGs の世界の実現へと繋がるのでは ないでしょうか。
社会情勢に応じた企業市民活動 パナソニックの「環境保全活動」
企業市民活動の重点テーマとして SDGs の「目標 1:貧 困の解消」を置いているパナソニックですが、その他の取 り組みとして近年特に力を入れているのが環境保全活動 です。全世界の子どもたち向けに環境教育
(Eco Learning Program:ELP)を実施したり、社員食堂にサス テナブル・シーフード(持続可能な漁業や養殖の認証を 取得した水産物)を導入したり、既に多方面で取り組み を行っています。その時々の社会情勢に合わせて、企業 市民活動を実施するパナソニックの活躍は多岐にわたり ます。創業者松下幸之助の遺伝子を持ったパナソニック が、SDGsに貢献する力は無視することができないでしょ う。